CURT BOETTCHER / Misty Mirage

AORで言うところの金字塔とも言えるアルバムはジェイ・グレイドン＆デヴィッド・フォスターという最重要人物２人が結成したAIR PLAYの８０年作『AIR PLAY』である。

何はともあれ、全く無知の方にオススメするとしたら選ばれるであろう１枚。

ソフト・ロックで当てはめてみると、ロジャー・ニコルス＆スモール・サークル・オブ・フレンズ『Roger Nichols and the Small Circle of Friends 』かミレニウム『BEGIN』と相場が決まっている。

そんなミレニウムの中心人物であったカート・ベッチャーの変則的ソロ・アルバム。

なぜ変則的かというと、本作はカートがキャリアの中で発表した純粋なソロ作品ではなく、ミレニウムやサジタリアス(カートが在籍したもう１つのソフト・ロック重要グループ)のデモを収録した未発表音源集だからである。

それも本国アメリカではなく、イギリスのレーベルから２０００年に突如として発表された。

アソシエイションやトミー・ロウのプロデュースやアレンジを務め、その後のボール・ルーム〜ミレニウム、サジタリアスという流れの中で特に目立つのがバックグラウンド・ヴォーカルのハーモニーの付け方。

常人には思いつかない複数のメロディ・ラインが複雑に絡み合うが立体的で、しかも印象に残るラインを作るアレンジ能力はピカイチ。

ソフト・ロックでは、よく”ドリーミー”という言葉が出てくるが、その言葉はカートのためにあるようなもので、紛れもなく天才という言葉が相応しい。

そんなカートがミレニウム『Begin』(６８年作)、サジタリアスの幻となる２ｎｄアルバム『The Blue Marble』(６９年作)を発表した後に書かれた音源が中心となる。

ミレニウムではリー・マローリー、サンディ・サリスベリー、ジョーイ・ステックといった優れたヴォーカリスト兼ソングライターが多数在籍していたが、中心となったのは紛れもなくカートであった事を証明するかのような音楽性。

Contents

聴きどころ
データ

聴きどころ

ハーモニー・ポップ(サンシャイン・ポップ)だけでなく、サイケデリック・ロックやプログレッシヴ・ロックの要素も感じられるのはカートが作る曲の特徴でもある。

ボール・ルーム時代から存在し、サジタリアスでも聴ける⑧Another Time、ミレニウムの⑩I Just Wanna Be Your Friendあたりはソフト・ロック・ファンは必聴。

ただし、音源はあくまでも眠っていたデモ音源を掘り起こしているので『Begin』のようなサウンド・プロダクションを期待してしまうと少々辛いかもしれない。

素朴な分、カート・ベッチャーの声と作曲、アレンジを味わうには良い１枚。

日本盤はジャケットが異なるが、どちらもサイケ風を狙っているが、ちょっと不気味なのでイギリス盤の方を掲載した。

７０点

データ

２０００年：イギリス(Poptones – MC5007CD)

プロデューサー：カート・ベッチャー

1.Tumbling Tumbleweed
2.Baby It’s Rea
3.Misty Mirage
4.Sometimes
5.Share With Me
6.That’s The Way It’s Gonna Be
7.Astral Cowboy
8.Another Time
9.Wearing Levi’s – (acoustic version)
10.I Just Wanna Be Your Friend
11.You Know I’ve Found A Way
12.Know It All
13.Stretch Levi’s
14.Tumbling Tumbleweed – (instrumental)
15.Misty Mirage – (instrumental)
16.Astral Cowboy – (instrumental)
17.Meanwhile Back In The World – (instrumental)
18.Dreamworld Fantasy No.11 – (instrumental)
19.Baby It’s Real – (instrumental)
20.Louise
21.Rest In Peace
22.Bank Americard
23.Crown Paper Towels