トッド・ラングランほどカテゴリー分けするのが難しいミュージシャンもあまりいない。
ボブ・ディランのマネージャーを務めたアルバート・グロスマンに見出されたことから、彼が設立したベアズヴィル・レコーズよりデビュー。
その時々で自身のやりたい曲が目まぐるしく変わるので、受ける印象が全く異なるのだ。
アルバムに収録する曲だって、そもそも彼自身が語っているように「ジャンル分け」というものが存在しない。
なにより、バックのオケとなる楽器を基本的には全て自分で演奏して仕上げていくスタイル。
並のミュージシャンならば、似たような曲調を回避することは出来てもアレンジ自体が偏ってしまったり、はたまた曲調自体が似通ってしまったりする。
ところが、トッド・ラングレンというミュージシャンには全くと言ってもいいほど、そういった既成概念が当てはまらないのだ。
総じて言えることは、ツボにハマった時のポップ・センスは抜群で、聴けば聴くほどクセになる様なスルメ曲が多い気がする。
彼を「AOR」というカテゴリーに入れるのは少々無理があるとも思う。
だが、時にブルージーだったり、ソウルフルだったり、そうかと思えば美しいバラードを書ける作曲能力はAORファンにも充分にアピールすると考える。
スティーヴィー・ワンダーが『Songs in the Key of Life』で2枚組(厳密にはオリジナルの場合EPを含めると3枚組)という才能の頂点に達した弩級のアルバムを発表した様に、本作はトッド・ラングレンという存在を世に知らしめた代表作と言っても過言ではない作品。
Contents
トップ・リコメンド
まずは何と言ってもアルバム冒頭の①I Saw The Lightである。
私にとって、この曲との出会いがトッド・ラングレン=ポップ・センスの塊という印象付けた作品。
“早すぎる”一人宅録状態で程よく音質も古めかしいが、それもまた味に思えるほど、サビ部分でのキャッチーなメロディ・センスが素晴らしい。
ドラムのタムによるフィルインも非常に印象的で、アクセントとして効いている。
続く② It Wouldn’t Have Made Any Differenceも基本路線はI Saw The Lightと同様のミドル・テンポが気持ちいいポップな楽曲。
この1、2で本作への期待はグッと高まる。
③Wolfman Jackでは、まるでT-REXの様なロックンロールを聴かせるが、④Cold Morning Lightでは途中リズム・チェンジしてドリーミーなコーラスを再びミドル・テンポで聴かせてくれるポップ曲。
I Saw The Lightと甲乙つけがたいぐらいトッド・ラングレンの楽曲として有名になったのが㉒Hello It’s Me
2枚目では⑳Dust In The Windの出来が白眉だが、⑲Overture – Money以降はミュージシャンを集めての仕上がりとなっていることからも1枚目の方に軍配が上がる。
上記で挙げた楽曲達がAORファンにもアピールすると考えた理由だ。
アルバムの途中ではテクノ・ポップの様な曲も飛び出してきたりと、まるでオモチャ箱をひっくり返したかの様な前衛的、実験的という言葉が当てはまる曲もありと、その時に思いついた曲を詰め込んだ感も否めない。
また、プロデューサーとしても有名でグランド・ファンク・レイルロード、ザ・バンド、ホール&オーツ、XTC、バッドフィンガー・・・日本人ではレピッシュや高野寛も手掛けるなど楽器のみならず全体をまとめるポジションでも才能を発揮。
プロデュースしたグループ名を見れば一目瞭然だが、本当にジャンルに対しての拘りが無い人だ。
70年代には、あのジャニス・ジョプリンのプロデュースをする機会に恵まれているが喧嘩別れした模様。
今では珍しくも無いが、1970年代から宅録を駆使して自分一人でこれだけの作品を作っている分けだから、その才能の深さは計り知れない。
オリジナルから2枚組とあって聴くヴォリュームも相当だが、良い楽曲達が多いのでお得感がある。
86点
データ
1972年:アメリカ(Bearsville – 2BX 2066)
プロデューサー:トッド・ラングレン
1. I Saw The Light
2. It Wouldn’t Have Made Any Difference
3. Wolfman Jack
4. Cold Morning Light
5. It Takes Two To Tango (This Is For The Girls)
6. Sweeter Memories
7. Intro
8. Breathless
9. The Night The Carousel Burned Down
10. Saving Grace
11. Marlene
12. Song Of The Viking
13. I Went To The Mirror
14. Black Maria
15. One More Day (No Word)
16. Couldn’t I Just Tell You
17. Torch Song
18. Little Red Lights
19. Overture – Money
20. Dust In The Wind
21. Piss Aaron
22. Hello It’s Me
23. Some Folks Is Even Whiter Than Me
24. You Left Me Sore
25. Slut
モッズ野郎サガワトモユキが参加するポップスバンド、ザ・ナイト・フライヤー(通称:ナイフラ)関連ページはこちらからどうぞ。60’Sアメリカン・ポップス、フレンチ・ポップス、AOR、MOR、シティ・ポップス、ソフト・ロックファンへ贈る!!
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