70年代のソウル〜フュージョン周辺には、プレイヤーとしての高い技術を持ちながら、同時にポップスとしての完成度も追求していくタイプのミュージシャンが存在する。本日取り上げるナラダ・マイケル・ウォルデンも、まさにその代表格のひとりである。
ドラマーとしてマハヴィシュヌ・オーケストラやジェフ・ベックとの活動で知られる彼だが、そのプレイスタイルは単なるテクニカル志向に留まらず、常に楽曲全体を見据えたグルーヴ作りに重きが置かれている。その延長線上にあるのが、ソロ・アーティストとしての作品群であり、本作『Awakening』はその中でも重要な位置を占める1枚である。
まず全体を通して感じるのは、リズムの“しなやかさ”である。ドラマー主導の作品というと、どうしてもリズムが前に出過ぎる傾向があるが、本作ではそうした印象はほとんど無い。むしろ全体の中で自然に機能しており、他のパートと有機的に絡み合うことで独特のグルーヴを生み出している。
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サウンドについて
サウンド面ではファンクやソウルをベースにしつつも、随所にジャズ的な要素や洗練されたアレンジが取り入れられており、いわゆるクロスオーバー〜フュージョン的な質感が強い。ただし難解さは抑えられており、あくまで“聴かせる音楽”としてのバランスが取られている点が特徴的である。
注目したいのが、ヴォーカルと演奏の関係性だ。ウォルデン自身のヴォーカルはソウルフルでありながらも過度に前面に出ることはなく、あくまでトラックの一部として機能している。一方で演奏陣もテクニックを誇示する方向には走らず、楽曲の流れを優先したプレイに徹している。この“全体最適”の発想は、プロデューサーとして後に成功する彼の資質を既に感じさせる部分でもある。
そうした特徴が分かりやすく表れているのが冒頭から続く一連の楽曲群だが、中でも白眉はI Shoulda Loved Ya。タイトなリズムとキャッチーなメロディが絶妙に噛み合い、一聴して印象に残る完成度の高いトラックに仕上がっている。コーラスワークやアレンジの細部も非常に丁寧で、単なるダンス・トラックに終わらない奥行きを持っている。
一方で、バラード系の楽曲においてもそのセンスは発揮されており、感情を前面に押し出し過ぎることなく、あくまでグルーヴの中で聴かせるスタイルが貫かれている。このあたりの“抑制の効いた表現”がアルバム全体の品の良さに繋がっている。
アルバム全体としては、リズム主体でありながらも決して単調に陥ることなく、楽曲ごとにしっかりとした表情を持っている。ただし、強烈な個性や実験性を求めるリスナーにとってはやや整い過ぎていると感じる部分もあるかもしれない。
しかし逆に言えば、どの曲も高い完成度でまとめられており、安心して聴ける安定感がある。ファンク、ソウル、フュージョンといった要素をバランス良く取り入れながら、それらを“聴きやすい形”に落とし込んでいる点は高く評価できるだろう。
後のプロデューサーとしての大成功を知っていると、本作はその原点を垣間見ることのできる作品としても興味深い。プレイヤーとしての技巧と、楽曲を成立させるための視点、その両方が高いレベルで共存している1枚である。
参加メンバーもカルロス・サンタナ、ハイラム・ブロック、ジェイ・グレイドン、パット・スロール(G)、
ケニー・バーク、ネイト・フィリップス(B)、クリフ・カーター、グレッグ・フィリンゲインズ、ボビー・ライル(K)
ブレッカー・ブラザーズ(Sax)、アイアート(Per)、 ポインター・シスターズ、アンジェラ・ウィンブッシュ、タワサ(BGV)等豪華さ。
もし「グルーヴの良さとポップスとしての完成度、その両方をバランス良く楽しみたい」というのであれば、本作は非常に有力な選択肢になる。AOR的な“洗練”とも地続きにある、上質なクロスオーバー作品として薦めたい。
データ

1979年:アメリカ(Atlantic – SD 19222)
プロデューサー:ナラダ・マイケル・ウォルデン、ソニー・バーク、ウェイン・ヘンダーソン
1. Love Me Only
2. I Don’t Want Nobody Else (To Dance With You)
3. Give Your Love A Chance
4. They Want The Feeling
5. Awakening Suite Part I (Childhood – The Opening Of The Heart)
6. The Awakening
7. Listen To Me
8. Full And Satisfied
9. Will You Ever Know
作編曲家、ベーシストのサガワトモユキのソロ・プロジェクトVOL DE NUIT関連ページはこちらからどうぞ。60’Sアメリカン・ポップス、フレンチ・ポップス、AOR、MOR、シティ・ポップス、ソフト・ロックファンへ贈る!!
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