70年代のアメリカン・ポップス〜ロックの周辺には、確かな演奏力とソングライティングを持ちながらも、大きなムーヴメントの影に隠れてしまったバンドが少なからず存在する。本日取り上げるバーナビー・バイも、そうした“知る人ぞ知る”タイプのグループと言っていいだろう。
4人編成のバンドである彼らは、いわゆる一つのジャンルに収まりきるスタイルではなく、ポップス、ロック、さらにはパワーポップ的な要素までを柔軟に取り入れたサウンドを展開している。その中で発表された本作Room to Growは、バンドとしての完成度が一つのピークに達した作品である。
まず一聴して感じるのは、楽曲の“整い方”である。どの曲もメロディが非常に良く練られており、シンプルな構成ながらもフックがしっかりと用意されている。いわゆる一発で強烈な印象を残すタイプではないが、聴き進めるうちに自然と耳に残っていく、そんな強さを持っている。
サウンド面ではギターを軸にしたオーソドックスなバンド編成だが、アレンジには細やかな工夫が見られる。コーラスワークの重ね方やリズムの取り方など、随所にポップスとしての洗練が感じられ、単なるロック・バンドの枠に収まらない広がりを持っている。
ここで重要なのが、ヴォーカルと演奏のバランスである。本作では特定のメンバーが突出して前に出るというよりも、バンド全体で楽曲を成立させている印象が強い。ヴォーカルはあくまで楽曲の中心にありながらも、バックの演奏と対等な関係を保っており、この“5:5に近い関係性”がアルバム全体の安定感に繋がっている。
そうした特徴が分かりやすく表れているのがアルバム前半の楽曲群で、軽快なテンポとキャッチーなメロディがバランス良く配置されている。特にギターのカッティングやリフは過度に主張することなく、楽曲の流れを支える役割に徹しており、その結果として全体のまとまりが非常に良い。
一方でミディアム〜スローの楽曲では、メロディの良さがより際立つ構成になっており、コーラスワークの美しさも相まってアルバムに奥行きを与えている。派手なバラードで押すのではなく、あくまで自然体で聴かせるスタイルが貫かれている点も好印象である。
アルバム全体としては、大きな起伏や劇的な展開で引きつけるというよりも、一定のクオリティを保ちながら安定して進んでいくタイプの作品である。そのため、強烈な個性や実験性を求めるリスナーにとってはやや地味に感じる可能性もあるだろう。
しかし逆に言えば、この“均整の取れた作り”こそが本作の魅力である。どの曲も過不足なく仕上げられており、アルバム単位で聴いたときの完成度は非常に高い。派手さではなく“良い曲が並んでいること”そのものに価値を見出せるかどうかが評価の分かれ目になるだろう。
ジャンルとしてはAORのど真ん中というよりは、その周辺に位置するポップ・ロックといった印象だが、サウンドの洗練度やメロディの質感には十分に通じるものがある。むしろAOR的な感覚の“手前”にある良質なポップスとして捉えた方がしっくりくるかもしれない。
他にもソフト・ロックやジャズ・ロック、フュージョン的なアプローチをするなど、幅広い音楽性を持つバンドである。
もし「突出した個性よりも、安定したクオリティのポップスをじっくり楽しみたい」というのであれば、本作は非常に有力な選択肢になる。大きな話題にはなりにくいタイプの作品ではあるが、その分、長く付き合える1枚として静かに薦めたい。
72点
データ

1973年:アメリカ( Atlantic – SD 7273)
プロデューサー:アーメット・アーティガン、バーナビー・バイ
1. The Day Came On
2. I Feel For You
3. She Was Pleased
4. I Think I’m Gonna Like It
5. Boopa
6. The Way
7. Laneya
8. Jessie Girl
9. Marsha Mamaillia
10. Dreamer
11. Something Good About Nothing
13. She’s Leaving Home
作編曲家、ベーシストのサガワトモユキのソロ・プロジェクトVOL DE NUIT関連ページはこちらからどうぞ。60’Sアメリカン・ポップス、フレンチ・ポップス、AOR、MOR、シティ・ポップス、ソフト・ロックファンへ贈る!!
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