女性ヴォーカルを中心としたグループというと、どうしてもソフトロックやフォーク寄りのサウンドを想像しがちだが、本日ご紹介するChunky, Novi & Ernieは、そのどちらにも完全には当てはまらない独特の個性を持ったグループである。
メンバーは後にソロ・シンガーとしても活躍するローレン・ウッドこと”Chunky”、ヴィオラ奏者として数多くのセッションで活躍するノヴィ・ノヴォグ、そしてベースのアーニー・エレミタによる3人編成。プロデュースにはTed Templeman、さらにJohn Caleが名を連ねており、この時点でも決して無名バンドとして片付けられない布陣である。
本作『Chunky, Novi & Ernie』は彼らのデビュー・アルバムであり、ポップス、フォーク、カントリー、ジャズ、さらにはクラシックまでを自然に取り込んだ、非常にユニークな作品に仕上がっている。ジャンル分けをしようとすると意外と難しく、それこそ本作最大の魅力と言っていいだろう。
まず耳を惹くのは、3人が織り成すナチュラルなアンサンブルである。
ローレン・ウッドの柔らかく温もりのあるヴォーカルを中心に据えながらも、ノヴィのヴィオラが独特の色彩を加え、アーニーのベースが全体をしっかり支えている。決して誰か一人が主役という訳ではなく、それぞれが楽曲の一部として機能している点が実に心地良い。
また、バックを固めるミュージシャンも必要以上に自己主張することはなく、あくまで楽曲を引き立てることを最優先に演奏している。このヴォーカルと演奏が対等な関係を築いているバランスは、私がAOR作品を評価する際にも重視しているポイントであり、本作にも十分共通する部分が感じられる。
サウンド面ではアコースティック・ギターやピアノを中心にしたフォーキーな楽曲が多いものの、ノヴィによるヴィオラが加わることで独特の浮遊感が生まれている。さらにJohn Caleによるストリングスやホーンのアレンジも非常に効果的で、単なるアコースティック・ポップスに終わらせていない。
Contents
聴きどころ
聴きどころは何と言っても①Underground。
後にMontroseがカヴァーしたことでも知られる楽曲だが、こちらのオリジナルは軽快なリズムと爽やかなメロディが印象的で、アルバム全体の方向性を見事に示している。ハードロック・バンドが取り上げたくなった理由も頷けるほど、楽曲そのものの完成度が高い。
続くRosalieではどこかユーモラスな空気が漂い、Italian Seaではヴィオラを生かした美しいアレンジが光る。そして終盤のAmerica / Chicagoでは、それまでのポップな雰囲気とは異なるクラシカルな展開も見せ、アルバムに見事なアクセントを加えている。全曲をローレン・ウッドが手掛けながらも、決して一本調子にならないのは、この多彩なアレンジによるところが大きい。
一方で、本作はキャッチーなヒット曲を連発するタイプのアルバムではない。
派手なギターソロやドラマチックな展開を期待すると少々肩透かしを食うかもしれないし、AORという視点から見ても、まだ都会的な洗練というよりはソフトロック色の方が強い。
しかし、その分アコースティックな温もりと独創性は非常に魅力的である。
後年ローレン・ウッドがソロ・アーティストとして、またノヴィ・ノヴォグが数多くのセッションで重宝される理由も、本作を聴けば十分納得できるだろう。既にこの時点で、それぞれの個性はしっかりと確立されているのである。
派手さではなくセンスで聴かせるアルバム。
もしソフトロックとAORの中間に位置するような、肩の力を抜いて楽しめる作品を探しているのであれば、本作はぜひ一度手に取っていただきたい隠れた好盤である。
79点
データ
1974年:アメリカ(Reprise Records – MS 2146)
プロデューサー:ジョン・ケイル、テッド・テンプルマン
1. Underground
2. Rosalie
3. Chicago Fog Lift
4. Antique
5. Fruits & Vegetables
6. Lola And The Boys
7. Italian Sea
8. Atlantic Liner
9. Renaissance
10. America / Chicago
作編曲家、ベーシストのサガワトモユキのソロ・プロジェクトVOL DE NUIT関連ページはこちらからどうぞ。60’Sアメリカン・ポップス、フレンチ・ポップス、AOR、MOR、シティ・ポップス、ソフト・ロックファンへ贈る!!
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