ポップスからジャジー、ソウル、ファンク、R&B等々幅広いジャンルを歌いこなしてしまう日本を代表する女性シンガー・ソングライターの1人。
名曲「頬に夜の灯」が収録されている82年作『Light’n Up』はAOR/シティポップス・ファンにアピールする名盤として名高いが、こちらはもっと素朴な作り。
その歌声から和製ローラ・ニーロと言われた吉田美奈子デビュー・アルバムは73年発表。
演奏は後にティン・パン・アレー(Dr林立夫、B細野晴臣、G鈴木茂、K松任谷正隆)と改名するキャラメル・ママ、レコーディングには70年代のポップス界には欠かせないエンジニアである吉野金次氏が担当。
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聴きどころ
この質感が独特なのは時代背景的にフォーク・ソングが流行るような70年代の作品ということもあり、昭和を感じる影のあるメロディや歌詞にキャラメル・ママ(主に細野氏が中心になっていたのだろう、特にリズム面)のアレンジが当時としてはモダンな”攻め”のアレンジをしているという、そのバランスがかなり面白い。
正直、私自身がベーシストということを抜きにしても一般リスナーが初めて聴いても耳を奪われるのは美奈子氏の歌の次に細野さんの弾くベースとドラムのリズム面ではないだろうか。
普通の8ビート(ドンタンドドタンというリズム)で叩かずに変則的な位置にスネアとキックを入れ、寄り添いつつも隙間隙間で主張しているベースは林&細野の真骨頂。
とにかく凝ったリズム・アレンジになっていて、尚且つそれが楽曲の邪魔を一切していないという点がすごい。
この時代、歌謡曲は「先生」と呼ばれていそうなアレンジのスペシャリストが手がけると、正統派とも言える美しさや規則正しいカッチリとした作品が多かったが、キャラメル・ママの場合は全員がミュージシャンということもあり、もっと自由で演奏面も含めて時には本線から一瞬外れるようなラフさを残したような勢いを重要視したであろうアレンジが他では聴けない点が今も受け入れられている要因になっていると思う。
また、吉田美奈子氏の歌唱力も素晴らしいのはもちろんだが、こんなにもヴァラエティに富んだ作品をピアノも弾きながら書き上げたコンポーズ能力も高く、おまけにオーケストレーション・アレンジまでこなしているというから畏れ入る。
唯一と言ってもいいかもしれない、明るいソウルを感じさせる①外はみんな、シンガー・ソングライターらしいアルバムタイトルのピアノ曲③扉の冬、イントロのストリングスから切なさが印象的なデビュー・シングルとなった④ねこ、メロウなミドル・ナンバー⑦かびん、⑨週末など名盤に相応しい内容。
⑥変遷の造りなんて20歳そこそこのシンガー・ソングライターが生み出したとは思えない作品で、初めて聴いた時は違った意味で衝撃的だった。
80年代のキラキラした音作りのアルバムもいいかも知れないが、ユーミンや吉田美奈子さんのような70年代の新しいポップス=ニュー・ミュージックも、またシティポップの魅力だと思うのだが。
92点
データ
1973年:日本(Showboat – 3A-1004)
プロデューサー:吉田美奈子、細野晴臣、吉野金次
1.外はみんな
2.待ちぼうけ
3.扉の冬
4.ねこ
5.綱渡り
6.変遷
7.かびん
8.ひるさがり
9.週末
モッズ野郎サガワトモユキが参加するポップスバンド、ザ・ナイト・フライヤー(通称:ナイフラ)関連ページはこちらからどうぞ。60’Sアメリカン・ポップス、フレンチ・ポップス、AOR、MOR、シティ・ポップス、ソフト・ロックファンへ贈る!!
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