KRISTIN BERGLUND / Long Distance Love

Sagaworld Remaster CD Review

2023.06.19

本日は少々マニアックな１枚をご紹介。

ノルウェー生まれのシンガー・ソングライター、クリスティン・ベルグルンドの１９７９年作。

１９５３年生まれでアルバムデビューは１９７６年だが、活動自体は７０年代に入ってからのようで、何枚かのアルバム・レコーディングにバックグラウンド・ヴォーカリストとして参加後、ソロ作品を制作することになる。

最近(主に２０００年代以降)でこそスウェーデンをはじめとして、ベルグルンドの出身であるノルウェーやフィンランドなど、所謂”北欧系”ミュージシャンによる８０年代アメリカウエスト・コーストをリスペクトしたAORサウンドを聴かせてくれるグループが次々に出て来て、ちょっとしたブームから定番になりつつあるのだが、１９７０年代にアメリカ西海岸(一部ロンドン)でのレコーディングをしているミュージシャンというのは珍しい。

サウンドとしてはブルースを基軸に展開しているが、フォーキーな曲あり、ロックあり、バラード、R&Bと、なかなかヴァラエティに富んでいる。

こうした落ち着いたポップ路線は西海岸の精鋭ミュージシャン達のカラーも作品へ色濃く反映されていることもあって充分AORファンにもアピールするものだと思う。

Contents

参加メンバー
データ

参加メンバー

何と言っても注目はジェフ・ポーカロ(Dr)とデヴィッド・ハンゲイト(B)のTOTOコンビによる鉄壁なリズム・セクション。

さらにジェイ・グレイドン、デヴィッド・リンドレー、フレッド・タケット、エリオット・ランドール、ビリー・ジョー・ウォーカーJr.(G)、珍しいところではジョン・マック・レベナックことドクター・ジョン(K)も参加、ロック、ブルース、カントリー、AORが好きな方には要チェックなメンバーが揃う。

ミュージシャン・コントラクターにフランク・デ・カロ(６０年代の名アレンジャー、ニック・デ・カロの弟)の名前があることから、これらのメンバーを集めたのは彼の力によるもののようだ。

さらにもう１点上記ファンにオススメしたい理由は② It’s In Everyone Of Usはデヴィッド・ポメランツが、⑨Isn’t It Always Loveはカーラ・ボノフ、⑩Long Distance Loveはローウェル・ジョージ作を取り上げている点。

AOR屈指のバラディアーであるデヴィッド・ポメランツとウエスト・コースト・ロックのリトル・フィートを率いていたローウェル・ジョージ作に目をつける着眼点が素晴らしい。

その他アラン・トゥーサン作 ⑥Just A Kiss Away、スモーキー・ロビンソン作⑦ You Really Got A Hold On Me、ボビー・ウーマック作⑧It’s All Over Nowなど黒い曲もある。

ベルグルンドのオリジナル曲はフォーキーな④Hometownshakerのみと少ないが、むしろ本作の路線に見合った楽曲を集め、まとまりを感じるので違和感はない。

肝心の英語によるヴォーカルも安定感やパワー、時にはコブシを聴かせる場面もあり、伸びやかな声質は聴いていて清々しい。

情報が非常に少なく詳細なキャリアが見えにくいが、８０年代以降はブルース路線へ完全に転向し、２０００年には自身のバンドであるクリスティン・ベルグルンド・バンドを結成するが２００６年、５２歳という若さで不慮の事故により帰らぬ人に。

８５点

データ

１９７９年：ノルウェー(Talent – TLS 4015)

プロデューサー：エリック・W・ワングベルグ、トム・パトリック・サリスベリー

1. Steal Him Away
2. It’s In Everyone Of Us
3. Money Honey
4. Hometownshaker
5. If I Had A Way With Words
6. Just A Kiss Away
7. You Really Got A Hold On Me
8. It’s All Over Now
9. Isn’t It Always Love
10. Long Distance Love

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