高橋ユキヒロ / Saravah!

Sagaworld Remaster CD Review

2023.06.13

YMO、サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックス・・・近年ではpupa、METAFIVEと、常に様々な一流ミュージシャン達と共演してきた高橋幸宏(本作では高橋ユキヒロ名義)のソロ１作目で１９７８年発表。

ドラマーとしてリズムの正確さに定評があったが、このアルバムではヴォーカルも披露している。

アルバムを聴くと、まず曲調の多彩さに驚かされる。

ご本人の中でヨーロッパ志向が強かったようで、タイトルにピエール・バルー(ボサ・ノヴァやアコースティックなサウンドを得意とするフランスのミュージシャン)影響が垣間見え、カヴァー曲もカンツォーネ、さらにはジャケットをパリで撮影していることもあって全体的にヨーロッパの香りが漂うがシャンソンあり、ボサノヴァあり、レゲエあり、ラテンあり、エレクトロニカありと雑多な音楽が混ざっている。

それを東京で日本の一流スタジオ・ミュージシャンと共に作り上げたポップス。

洒落たサウンドはシティ・ポップスの特徴そのものである。

昨今持て囃されている８０年代を中心とした「シティ・ポップ」のサウンドはキラキラとした都会的な”陽”のイメージだが、このアルバムに関してはもっと洗練されて落ち着いた印象がある。

もちろんユキヒロ氏の渋いヴォーカルやサウンドの志向と、全曲でブラスやストリングスを含めたアレンジ面で強力にバックアップした坂本龍一氏のコーディネートのお陰で「大人のポップス」に仕上がっているのだ。

とても２０代半ばのミュージシャンが作った作品とは思えないぐらい。

また、話題になかなか上がらないが、高橋・坂本と後にYMOを結成する細野晴臣氏はベースで全面協力。

Contents

トップ・リコメンド
参加メンバー
データ

トップ・リコメンド

④La Rosaは、細野氏が多大なる影響を受けたチャック・レイニーを彷彿させるプレイで、ベーシストとしてのハイライトと言ってもいい。

ソロのハモンドオルガンは、その後の活動を振り返ると当時でしかあり得なかった思われる坂本氏の名演だと思う。

加藤和彦氏作った曲も、ヨーロッパ風お洒落ポップスでAORファンにもアピールするだろう。

日本ではジプシー・キングスのカヴァーで有名な①Volareがアルバム冒頭にかかった時にはアレンジの意外性に驚いた。

スティーヴィー・ワンダーにも影響されたという⑦Sunset、一聴して山下達郎＆吉田美奈子のバックグラウンド・ヴォーカルと分かる⑧Back Street Midnight Queenなどが聴きどころ。

唯一となるインストの⑥Elastic Dummyはライナーにある様にアース・ウィンド＆ファイアー「」のようだ。

参加メンバー

坂本龍一(K)、細野晴臣(B)、松木恒秀、鈴木茂、和田アキラ、高中正義、加藤和彦、大村憲司(G)、斉藤ノブ、浜口茂外也、今井裕、林立夫(Per)、山下達郎、吉田美奈子、ラジ(BGV)

名前を見るだけで、シティ・ポップ・ファンはクラクラしてしまうぐらい素晴らしいメンバーが揃っているが、この中でも坂本龍一氏はアコピ、エレピはもちろんアープ・オデッセイ、ハモンド・オルガンと楽曲によって使い分け、八面六臂の大活躍。

８７点

データ

１９７８年：日本(Seven Seas – SKS(S)-1011)

プロデューサー：高橋ユキヒロ

1. Volare (Nel Blu Dipinto Di Blu)
2. Saravah!
3. C’Est Si Bon
4. La Rosa
5. Mood Indigo
6. Elastic Dummy
7. Sunset
8. Back Street Midnight Queen
9. Present

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