キング・オブ・AOR、ミスターAORの異名を持つボビー・コールドウェルの４作目は日本で発売された１９８３年作。
「前作に引き続きバックをTOTOメンバーが務めた事でも話題になった」的な書き方をされている事が多い。
一聴して”TOTOっぽい”と分かるサウンド・プロダクション。
歪んだギターにシンセ・サウンド、ゲート・リヴァーブがかったスネア、８ビート連打する鍵盤。
良くも悪くもこれぞ、８０年代象徴するサウンドそのものである。
「良くも悪くも」と書いたが、この時代は本当にこのパターンが流行った。
日本の歌謡曲・・・今で言うJ-Pop界でも随分と多用され、アイドルから歌手、バンドまで猫も杓子もとはよく言ったものである。
だからこそ「８０年代」という時代を感じさせるサウンドになってしまい、おまけに流行り過ぎてしまった故に今聴くと単に「あの頃流行った古いサウンド」というばかりでなく、その後直ぐにやってくるデジタル・サウンド到来を充分に予感させるサウンドなのだ。
本作でも冒頭に記した「TOTOメンバーがバックを〜」と売り文句のようになっているが実際はジェフ・ポーカロ(Dr)とデヴィッド・ハンゲイト(B)のリズム体が参加しているのみ。
確かにシンセの使い方はスティーヴ・ポーカロ風ではあるし、ロックなギターも登場するが、あくまでもルカサー風なだけといった感じだ。
他にもイエロー・ジャケッツのジミー・ハスリップも参加しているが、これまた彼の存在感はあまり感じられない、、、。
ドラム、ベース、ギターとボビー・コールドウェル自身がプレイしている曲もあり、参加ミュージシャンの少なさからも、こぢんまりした印象。
個人的にずっと聴くには、なかなかツライものがあるのだが、その一番の要因は「無機質なサウンド」だと思う。
誕生したての打ち込みサウンド全開と同じく、せっかく人力で演奏しているパートもエフェクティヴなサウンド処理のおかげで”無機質に聴こえてしまう”のだ。
エンジニアはカイル・レーニング(イングランド・ダン＆ジョン・フォード・コーリーやダン・シールズなどをプロデュース)が務めているが、彼の仕事というより当時の最先端だったサウンドを取り入れた結果がこの作品の全体を印象づけていると思う。
Contents
トップ・リコメンド
その中でもリード・トラックでもある①Sherryはトップに持ってきていることもあり、オススメしたい。
ロビー・デュプリーも歌ったビル・ラバウンティ作の②She Loves My Carも収録されているが、それほど彼の色を感じさせない。
オリエンタルな⑥Loaded Gunやレゲエの⑦Class Of 69 などビートも面白いが、いずれもトップ・リコメンドには至らず。
ラテン・ビートの⑨Once You Given Inや⑩Never Loved Beforeなどでは、ようやくコールドウェルらしさが顔を覗かせる。
①Sherryがなければ、こちらを推していただろう。
元々はマイアミらしいブルー・アイド・ソウル路線で火が点いた人だが、今作のロマンティック・ハードネス路線とデジタルは時代といえば時代なのだが、どうも彼の良さとはミスマッチな気がしてならない。
AORに限らず、ポピュラー・ミュージックは時代的にギリギリ人力路線の作品が多かったはずだが、この作品含め、以降はデジタル・サウンドの導入が始まる・・・・。
６７点
データ
１９８３年：日本(Polydor – 25MM 0325)
プロデューサー：ボビー・コールドウェル、カイル・レーニング
1. Sherry
2. She Loves My Car
3. Fraulein
4. She Does It Better
5. Cover Girl
6. Loaded Gun
7. Class Of 69
8. Saying Goodnight
9. Once You Given In
10. Never Loved Before
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