角松敏生 / WEEK END FLY TO THE SUN

一足早く、夏に聴きたいAOR。
このアルバムはジャケットからも予想出来るようにAORというよりもリゾート・ミュージックのイメージが強い。
角松敏生さんL.A.録音の第2弾で82年発表。

AORというと「都会」や「夜」というキーワードと渋い、ニヒルなイメージを関連付けるのが定番だが、これがリゾート・ミュージックになると、まるっきり逆になる。
「海」「昼間」「太陽」のように明るく開放的で陽気な雰囲気だ。

“和製ジェイ・グレイドン”の異名を取る角松さんのギターはあまり聴けないのだが、何と言っても全曲アレンジで参加しているトムトム84の力は無視出来ない。
彼はEW&Fを始めラムゼイ・ルイスなどでもアレンジをしている事で有名な人物である。

そしてそのトムトム84の計らいで「本物」のEW&Fのメンバーであったアル・マッケイが数曲参加。
ナイル・ロジャースやレイ・パーカーJr.等と並んで、世界一とも言える、このレフティー・リズム・ギタリストはEW&Fを脱退後も柔らかいカッティングを披露してくれる。
カッティングだけでも十二分に魅力的な職人ギタリストだ。

この作品に関するメンバーは角松さんの希望を踏まえた上で揃ったミュージシャン達だが、今ではなかなか考えにくいぐらい豪華な組み合わせである。
ジノ・ヴァネリとの仕事で一躍名を挙げた、これまたレフティー・ギタリスト、カルロス・リオスが全曲参加。
ベースにはサンダー・サムの愛称を持つルイス・ジョンソンにリー・リトナーを始めとしたセッションでもお馴染み、L.A.ベース界の重鎮、エイブラハル・ラボリエル、そしてネイザン・イースト。
ドラムにはジョン・ロビンソン、ホーン・セクションにはフェニックス・ホーンズなど、鉄壁の布陣である。
角松さん特有の声質も、こういったリゾート路線(ご本人は意識されてないと思うが)にはバッチリ填っており、好感の持てる爽やかなサウンドである。
①Office Ladyや②Rush HourなどはAORファンなら間違いなく気付く、どこかで聴いた事あるような雰囲気の曲だが、そこはご愛嬌か。
トップリコメンドは⑤FRIDAY TO SUNDAYだが、アル・マッケイの魅力が凝縮された、その前の④SPACE SCRAPERもカッコイイ。

この方の場合は日本語の乗せ方が非常にスムーズで、元ネタを匂わせつつも上手い事消化してオリジナリティを加えている印象がある。
故に、あら探しのような事をすると「この曲は何々風だ」という事になりかねないが、アルバム通して聴いてみれば、その完成度の高さを実感出来よう。

ファンキーなブラスも華麗なストリングスも全ては大元である楽曲が素晴らしいからに他ならない。
その点では声質は違うが、やはり山下達郎さんを思い出さずにはいられない。
しかし、ここに記録されているのは完全な”角松ワールド”の一面である。

78点