DONNY HATHAWAY / LIVE

Sagaworld Remaster CD Review

2019.11.20

数あるアルバムの中でも本当の意味で(セールス面や後世に与えた影響など)作品として成立してるライブ・アルバムというのは数が少ない。
そんな中、この作品は正真正銘のソウル・ミュージックによるライブ・アルバム。

ダニー・ハサウェイの作品はスタジオ盤でも非常に高いクオリティを誇っているが、その中でも傑作の呼び声が高いのが本作である。
ライブ・アルバムを作品として聴く場合、スタジオ盤と大きく違う点にも注目せざる得ない。
基本的には”生”演奏(その瞬間の、その場で録ったもの)をパッケージしてあるものというのが大前提だが、アーティストによっては後々オーバー・ダブを加える事も今に始まった事ではない。

これにはいくつかのメリットがあるのだが(その場で起きた演奏のミスを修正する、ライブでは表現しきれなかった音を足すなど)、人によっては少々のミスより演奏の勢いを大事にしたいと”そのまま”リリースするアーティストも多い。

故にサウンドの面でもかなり荒いものや、演奏のクオリティでは当然の事ながらスタジオ・テイクより劣る作品が多いのも事実だ。

この作品では、録った場所(ライブハウス)が場所という事もあってオーディエンスの生々しいまでの反応が手に取るように分かるぐらい会場の熱気が伝わってくる。
相乗効果で、それに応えるかのようなミュージシャン達のプレイも熱を帯びてきて、会場とステージが一体となった箱の雰囲気は圧巻の一言。
これはライブ盤でしか収録することが出来ない最大のメリットである２次的要素だ。

Contents

サウンドについて
データ

サウンドについて

バック・ミュージシャンを含めた演奏も実に気持ちいい。
主役のダニーは天才的とも言える抜群の感性で聴いている我々に(実際にその場にいたオーディエンスだけでなく今現在、作品として聴いている私達にも)訴えかけてくるようなヴォーカルで優しく包み込んでくれる。
加えて彼のトレード・マークとも言えるエレピ、ウーリッツァーでの演奏が実に心地良い。
単体で聴くとちょっとチープな音色だが、バンドのアンサンブルに混じると、まるで他の楽器同士を結びつける潤滑油のように滑らかでスムーズなサウンドだ。(ウーリーの音がよく分からない方はカーペンターズを聴いてみてください。そこで聴ける柔らかいピアノの音です)

そして私がベーシストだからという事を抜きにしても注目したい、名手・ウィリー・ウィークスのグルーヴィー且つファンキーでリズムを引っ張ってゆくベース。

とても的を射たレビューがあったので引用させて頂くが「早叩きのドラマー、スラップオンリーのベースマン、テクニックを誤解しているギタリスト達、襟を正して聴くが良い。これが人間が心地良いと感じる音楽なのだ。」これらの言葉が本作のすべてを表している。

あの超名曲マーヴィン・ゲイのWhat’s Going Onも単なるカバーでなく、しっかり自分の曲にしてしまって原曲が霞みそうなぐらいのアレンジで披露。
もちろん、それだけでなく他のオリジナル曲による演奏に只々溜息が出てしまう。
DEEP PURPLEの『MADE IN JAPAN』、KISSの『ALIVE』などと同様に、ソウル・ファンだけでなく全てのミュージシャンが目標とするライブを凝縮した１枚。

個人的にダニーはマーヴィン・ゲイと双璧をなすヴォーカリストである。

１００点

データ

１９７２年：アメリカ(ATCO Records ‎– SD 33-386)

プロデューサー：アリフ・マーディン、ジェリー・ウェクスラー

1. What’s Goin’ On
2. The Ghetto
3. Hey Girl
4. You’ve Got A Friend
5. Little Ghetto Boy
6. We’re Still Friends
7. Jealous Guy
8. Voices Inside (Everything Is Everything)

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