GRAHAM DEE / MAKE THE MOST OF EVERY MOMENT

Sagaworld Remaster CD Review

2024.11.04

グレアム・ディー。一体どのぐらいの方がこの名前をご存知なのだろうか。

数あるAORのガイド的な本やネット記事でも見かける事が少ない、これぞ「知る人ぞ知る」存在だ。

しかし、知名度に反して内容は充分、いや、それどころか本作に関しては、よくある「AOR名盤」リストに加えても良いのではないかとさえ思える１枚。

グレアム・ディーのキャリアは６０年代からと古く、ブリティッシュ・ホワイト・ソウル／AORのギタリスト、ブリン・ハワースが在籍していたサイケデリック・ビート・グループ「The Fleur De Lys=(フラー・ドゥ・リー)」において後にデニス・ランバートとプロデュース・チームを結成し、大成功(グラス・ルーツ、ライチャス・ブラザーズといったオールディーズからフォー・トップス、タヴァレス、フィフス・ディメンション、ダスティ・スプリングフィールドといったソウル・ミュージックまで幅広く担当)するブライアン・ポッターと楽曲制作で参加。

元々ブライアン・ポッターとは楽曲を発表するためにバンドを結成していた時期もあり、この事からもディーの志向はプレイヤーというよりも制作側に重きを置いていたように思える。

しかし、思ったよりもセールス面での結果が結びつかず、アメリカに拠点を移す。

迎えた７７年、ついに自身のファースト・アルバムとして制作したのが本作である。

時代的になのか、元々持っている楽曲の志向からなのかは分からないが、本作はライトなメロディに軽やかなリズムが全体を包むメロウな作品だ。

Contents

トップ・リコメンド
データ

トップ・リコメンド

①Make The Most Of Every Momentの印象的なフルートやエレピを上手く使った柔らかなサウンド、歯切れの良いパーカッションとストリングス、ブラスがメロウで心地良い１曲こそ、AORファンに聴いてほしい。

アルバム全体を通して所謂「リード・トラック」となりそうな最も良いと思われる曲を冒頭に持ってくるのは海外の音源によくある傾向。

②Loneliest Man On The Moonはピアノリフとストリングスが盛り上げるバラードで、こちらもSSWとしてキャリアを感じさせる安定したクオリティの良作。

③Pretty Bird Flyはカーペンターズのように木管を使ったリフが印象的なナンバーで、アコギ中心ながらもこの曲でもフルートやストリングスといった楽器を使用、ディーのまろやかな歌声にもマッチしている。

⑤Stepping Out In Styleのように明るく捻りの効いたジャジーな楽曲を盛り込む点と、ストリングスを取り入れたスタイルはアメリカのフィラデルフィア・ソウルのようで、この辺りが英国産ホワイト・ソウルとも言われる要因だが、同時に⑥Whatever Tomorrow Bringsのようなエレキギターをフィーチャーした骨太のミディアム・ナンバーも収録するあたりはコンポーザーとして実力者である事を示している。

AOR、SSW、ソフト・ロック、ライトメロウなソウル・ミュージックが好きな方には本作はオススメになる事間違いなし。

リアル・シングやマキシン・ナイチンゲール等イギリスのディスコ／ソウル・ミュージックを手掛けたジェリー・シェリーとの共同プロデュース。

８７点

データ

１９７７年：イギリス(Pye Records – NSPL 18519)

プロデューサー：グレアム・ディー、ジェリー・シェリー

1. Make The Most Of Every Moment
2. Loneliest Man On The Moon
3. Pretty Bird Fly
4. Too Good To Last
5. Stepping Out In Style
6. Whatever Tomorrow Brings
7. If You Feel The Way I Do
8. We Spoke Of Love
9. Jessica
10. Slow Down

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