SAMUEL PURDEY / MUSICALLY ADRIFT

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一般的にAORが全盛だった時代と言えば76年~83年ぐらいまでで、そのわずかな間に出た作品は極めて上質な作品が多い。
所謂「当たり年」が続いた時代である。

中では一際印象的だったのがスティーリー・ダンで、そのシニカルな世界観とキャラクター、独特なサウンドの構築とそれに対する拘りと、どれを取っても”個性”の塊である。
当然そんな彼等に影響されたミュージシャンは多いわけで(私サガワもその一人です、、、)必ずしもリアルタイム世代でないものの、そういったティーンエイジャーが育って現代に”フォロワー”としてのミュージシャンになったアーティストがいくつか存在する。

このサミュエル・パーディーもそんな中の1つで、本作が発表されたのは世間が「ミレニアム」で騒いでいた99年である。
(※基本的にこのコーナーではこうした90年代後半から今現在出てきた新しいアーティストを「New-Gen」と呼ぶ事にする。)

彼等は2人組ユニットなのだがジャケットを見てお気づきの方も多いだろう。
ギャヴィン・ドッズ(Vo,G)バーニー・ハーレイ(Dr)の2人は共に”あの”ジャミロクワイでも活躍したメンバーである。

内容の方はフォロワーと言われるのも納得、ドナルド・フェイゲンを彷彿させる声、コード進行に現代的解釈を交えたものだ。
本家ジャミロクワイにはジェイ・ケイという絶対的君主がいたが、そのジャミロクワイのようなシンセを駆使した音作りをスティーリー・ダンの作風に混ぜ、クラブ風サウンドにしたような雰囲気である。

ジャミロクワイもスティーリー・ダンも古き良きR&B、ソウルのテイストが入っているのが共通項だろう。
一部では「音楽のネタは全て出尽くされている」とも言われている現代において古い曲を安易に当てはめたりせず、しっかり「クリエイト」しているのだ。
古き良き曲を”焼き増し”するのではなく、あくまで自分達のセンスも注入して新しい物を創り出す所にサガワとしてはシンパシーを感じる。
それが「パクリ」とは違う所だ。
スタイルやアイディアを似せるのはパクリでも何でもない。
クリエイトしているか、否かが大きく違うのである。

しかし、彼等はスティーリー・ダンに影響を受けた事を隠しているわけでもなく、むしろエリオット・ランドール(実際にスティーリー・ダンでプレイした事もあるNYのギタリスト)やフランク・フロイド(同様にバック・グラウンド・ヴォーカルとして参加)を呼んだり、極めつけはエリオット・シャイナーを参加させている。
彼はスティーリー・ダンの名盤エイジャをはじめ、TOTOやグレン・フライなども手掛けた事のある大物エンジニアである。

こうした故意に”本物”を呼んでしまう所にスティーリー・ダンへの憧れがあったのだろう。

どの曲がハイライトという事はないが惜しげもなく自分達でフォロワーぶりもアピールしてしまう潔さと繰り返しになるが「現代のスティーリー・ダン・サウンド」を楽しめる作品である。
現代的AORの解釈は彼等の登場によって開かれたと言っても決して過言ではない。
90点