STEVE DORFF / Steve Dorff Original Demos

Sagaworld Remaster CD Review

2023.06.05

本日ご紹介するスティーヴ・ドーフはシンガー・ソングライターというより音楽家と言った方がイメージしやすいかも知れない。

数々のドラマや映画音楽を手がけ、まさに「職人」という言葉が相応しい。

AOR系ミュージシャンとしての認知度は低いかも知れないが、グラミー賞３度ノミネートされるなど実力はお墨付き。

純粋な職業作家であるドーフの楽曲を歌ったシンガーは数多く、ザッと挙げてみるとケニー・ロジャース、ホイットニー・ヒューストン、アン・マレー、バーブラ・ストライサンド、ダスティ・スプリングフィールド、メリサ・マンチェスター、セリーヌ・ディオン、ヴァネッサ・ウィリアムスなど。

なぜか女性シンガーが多いのも特徴的だ。

職業作家のピアニストだから、シンガーとしての声や歌唱力ではない、かといってプレイヤーでもないので、プレイそのものや楽器に特徴があるわけでもないから自作した楽曲そのもので勝負している。

従って本作に収録されている楽曲はデモ・テープ(ここから宣伝・本番用に別のシンガーが歌ったり、バッキングをミュージシャンが差し替えるためのガイド的な役割)ながらハイクオリティで穴がない。

そして何と言っても本作最大のトピックは、ガイド・ヴォーカルにデヴィッド・フォスターの懐刀、あの”ヴォイス・オブ・AOR”ウォーレン・ウィービーが全曲参加している点だ。

これはもうAORファンならば必聴であるし、何よりアルバム全曲でウィービー歌っている作品は極端に少ないことから、かなり貴重な作品。

実績からいっても、本作を聴いても作曲家として素晴らしいコンポーザーなので、主人公であるドーフには申し訳ないが、どうしてもウィービーの方が文字数的に裂かなければならないほど珍しいということは皆様にもご理解いただきたい。

ウィービーがセッション・シンガーとして裏方のポジションにいる人なので通常アルバムの中で歌っていたとしても１曲から多くても５曲程度。

それでも彼が歌っていれば、それだけで「フィーチャリング〜」としてアルバムの宣伝文句的にフィーチャーされる。

２００４年にウォーレン・ウィービーの歌唱を世に広めるためのレーベル(それもまたすごいが、それだけ彼の声に虜になっている人たちは多い)、スペインのContante & Sonanteから１０００枚限定でリリース。

現在は再プレス無しで入手困難の超貴重盤だが、もし目にする機会があれば是非聴いていただきたい。

「デモ」というだけあってシンプルなピアノ中心の演奏になっている分、歌にフォーカスされる割合は高い。

得意のバラード系は絶品なのでAORと言わず、全ポップス・ファン必聴作品。

当然ながらトップ・リコメンドは無しでしょう。

８９点

データ

２００４年：スペイン(Contante & Sonante – CSCD-0104)

プロデューサー：スティーヴ・ドーフ

1. A Little Thing Called Life
2. And Still Run Out Of Time
3. I Never Stopped Loving You
4. True Love At Last
5. Kindred Spirits
6. The Echo Of Your Whisper
7. Everytime You Cross My Mind
8. Love’s The Silver Lining
9. The Wait Was Worth The Angel
10. In Love’s Name
11. I Just Fall In Love Again
12. Before We Kiss Tonight Goodbye
13. Somewhere In Time

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